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出産

読み方:しゅっさん

出産の画像

分娩は病院や助産院で行われるのが一般的です。胎児は妊婦の体内で成長し、10ヶ月程度で誕生します。産前の妊娠期間には帯祝い、産後には産飯〔うぶめし〕、産湯〔うぶゆ〕など、昔から行われている慣習が存在します。

意味・特徴・目的出産の習俗、産飯と産湯

子供が胎内で育つ期間は、大体10ヶ月(36〜39週)とされています。しかし昔から妊娠期間は「十月十日〔とつきとうか〕」と言われます。なぜ余分に「十日」長いのでしょうか。これは、予定日というのはしばしば遅れるものなので、あまり周りで騒いで妊婦にストレスを与えないように、という格言的意味合いが込められているようです。

子供の誕生後、米の飯が炊かれます。これを産飯といいます。炊かれた飯は、茶碗に高く盛られ、出産する部屋にあるたんすの上におき、産神〔うぶがみ〕に供えます。これは産婦や新生児を悪霊から守るための呪術的な儀礼です。「一生食べるのに困らないように」と、一升〔いっしょう〕の米を炊く地域が多いようです。産飯は生まれた子の枕元にも置き、産婦や産婆、近隣の女性や子供など多くの人(産〔さん、うぶ〕の忌み※により、男性は参加しない)に食べてもらいます。

生まれた子は産湯で体を洗われます。産湯は生後すぐに身を洗う湯と思われがちですが、実際には3日目に入浴させる湯のことをいいます。あの世から持ちこんだ穢れを洗い流し、この世で丈夫に育つことを願う呪術的な慣習です。産湯の中に酒や塩を入れると風邪を引きにくくなり、漆椀〔うるしわん〕を入れると漆にかぶれなくなると言われています。新生児を洗った湯は穢れたものとされ、床下やトイレなど日光の当たらない場所に捨てられます。

※「産の忌み」…昔は出産前後に守らなければならない決まり事が多くありました。
妊娠中に火事を見ると生まれる子にあざができると言われたり、タコや油揚げ等は妊婦の体に有害なので食べるとお産がうまくいかないとされました。またお産時に出血することから、妊婦は生と死、つまりこの世とあの世の境目をさまよっているものと考えられていました。そのため出産後の母親の体は、子供と同様あの世の穢れが残っているとされ、神棚や寺社に近づくことはご法度で、また周囲の人々からも一定期間隔離されました。

起源・歴史重要な役割を果たした産婆>

昭和の中頃まで、出産は自宅で行われるのが一般的でした。その際、近所に住む出産に立ち会った経験の豊富な女性(産婆〔さんば〕、取り上げ婆さん)が赤ん坊を取り上げていました。産婆は、分娩の手助け、後産の処理、新生児と産婦の世話などをこなし、さらには産飯、お七夜、食い初め、お宮参りなどの成長儀礼でも重要な役割を果たしています。

また、分娩は座って行われるのが普通でした。これは妊婦の体に良い、楽な姿勢だったためです。妊婦の座る部分の畳をあげ、藁〔わら〕などを敷き、また天井から綱を吊るし、それにつかまって出産をすることもありました。へその緒は竹べらで切り離し、紙に包んで生年月日を書き、大切に保存しました。これはお守りのようなもので、男の場合遠方への旅行や航海に、女なら結婚する際に持たされました。

同じ村落内の人達にとって、生まれてくる子は将来村の共同の仕事を担う、「自分達の大事な後輩」でした。そのため、出産はその家族・親戚だけでなく、その村落全体の大きな出来事として捉えられ、多くの者が安産を祈りました。

現在では出産は家族の問題になりましたが、これは地域の人間関係の変化や、出産の場所の自宅から医療機関への変化、出生率の高まりの結果なのかもしれません。

方法・形式様々な出産方法

今日出産は病院や助産院の分娩台の上で行われるのが一般的です。
妊婦はその上に仰向けになり、両足を広げる「仰臥位〔ぎょうがい〕」と呼ばれる体勢になります。これは欧米の産科学の普及に伴い導入されたもので、妊婦自身の産みやすさよりも、分娩を助ける産科医の利便が重視されています。

一方で、呼吸法で有名なラマーズ法、ヨガと禅を組み合わせたソフロロジー法、横向けや座位など妊婦の楽な姿勢で産むアクティブバースなど、少しでも妊婦が楽になるような出産方法も行われています。

■参考文献・ウェブサイト


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